機能で見る、というモノサシ

「機能で見る」というモノサシについて考えてみよう。
身の周りで混沌としているな、何かおかしいなと思ったとき、判断のためのモノサシや着眼点をまとめておいたほうがよいであろう。

・ 機能とはどういうものか 

 まず、機能、システムとはどういったものだろうか。
 「時間の経過に伴い一定の操作・処理が行われることで、利益状態など、以前とは異なる状態が得られること」というところだろう。

 「時間」という要素が必要といえる。例えば、ハサミの場合、まず紙を持ってきて、手で一定の操作をする。すると、期待する形やサイズの紙が得られる。二つに切断したかったら、ハサミで切るとカットされた望ましい状態が得られる。
 ある一定の操作を経て、時間の経過後、何らかの利益状態、作用効果が得られる。「時間」が入っているのがポイントだ。ハサミを使うことで、周囲が利益とかより望ましいと思う状態が提供される。

 時間の経過が関わらないモノは「機能している」とはいわない。例えば、単に百科事典があったとする。その情報を誰も見ないし触らないのであれば「機能している」とはいわない。100億円の金塊があったとしても、誰も気づかなければなかったことと同じことになる。
 どんなに素晴らしいモノや情報、知識があったとしても、それが存在しているだけでは機能しているとはいえない。利益、価値が生み出されているとはいえない。

 ソフトウェアの例でいえば、データがある一定の手順で処理されることで、顧客が見たいグラフが出るなどというものだ。電子レンジであれば、中に食品を入れてボタンを押すと、数分後、温かい食べ物が出てくるというようなものだ。いずれも、時間の経過が関係している。

 「大学で専門知識を習得したのに就職できない」という場合、知識があるという状態だけでは、人々が欲しいサービスを提供できる機能があるとはいえない。資格も同じだ。モノ知り、博識なだけでは役に立つ機能が提供できるとはいえない。
 「大学を出たのに、難関試験に合格したのに、なぜ就職できないのか」という状況が起こるが、知識や機能についての考察が甘いから、ということになる。

・ 機能は何か 

 つぎに、機能は何かと見ていく。ある組織やモノを見ていき、その機能は何かと見ていく。身の周りを見ていって、モノは置いてあるが機能がないのであれば、そこにある必要がない。無駄だったということになる。
 場合によっては、機能を見直すことがある。望まれている機能と提供される機能とが実は食い違っていることがある。役所の窓口にいったらたらい回しになって、結局、よくわからなかったというようなものだ。無駄が生じ続け、効率を落とすだけだ。
 また、同一の機能が重複している場合もある。縦割り組織のそれぞれが、同じようなシステムを発注していて構築していたりする。機能が同一であれば統合したほうがよい。

・ 機能しているか

 つぎに機能しているかという観点で見ていく。もし「機能していない」のであれば、削減の対象となる。
 例えば、スイッチが壊れていて機能しないのであれば、スイッチを捨てて、新しいモノに取り替えるしかない。スイッチを取り替えないと、スイッチにつながっている電灯も機能しない。スイッチも電灯も使えないのなら、その部屋も使えなくなってしまう。なので、機能しない部分を捨てることが重要だ。新しいものに取り換えることになる。
 壊れたスイッチがもったいないので捨てられないのであれば、直すしかない。スイッチを作り直すコストと新しいスイッチを買ってくるコストの比較の問題となる。
 ここで最悪の選択肢は、現状維持をしてしまうことだ。壊れたスイッチを作り直そうとして時間と費用、労力を消耗し、電灯も部屋もすべて使えない状態がずっと続くということだ。

 組織というものも同じであろう。一部の組織が機能不全になると全体が機能しなくなる。ダメな組織を入れ替えないと、全部がダメになる。
 国の組織というのでも同じだし、資格制度、採用制度というものでも同じだ。何かおかしい。利益がだんだん得られなくなってきた、というのであれば、機能というモノサシで見ていく。
 機能しなくなってきたときは廃止・削減して、入れ替えるほうが早い。廃止せずに現状維持をするというのが最も愚かな選択肢ということになる。機能するところも機能しなくなるからだ。

 「機能別組織」というものがある。個々の組織の内部では活動をしていたとしても、外部から見て機能しているかを見ないといけない。ハサミがあったとして、ハサミの側から見るのではなく、ハサミを使う側から見て使いやすいか、便利か、機能しているかを見ていかないといけない。高価なハサミだったとしても、壊れていて切れないのであれば意味がない。そこにあるだけ邪魔だ。

・ その機能は効率的といえるか 

 また「機能している」のであれば、その機能は効率的か。競争力はあるかと見ていくことになる。
 他と比べて効率が悪いのであれば、全体の効率を落としていることになる。日本の組織で行うより、海外のほうが安いのであれば、アウトソーシングしたほうが効率的ということになる。
 旧式の受発注システム、経理システムというのがあって、今どき、フリーソフトでネットで公開されているのであれば、旧来のシステムや要員を廃止したほうが大抵早い。

 ここで「機能は落ちてきているが、頑張っているのだから認めて欲しい」という要求を認めてしまったとする。すると、効率や利益を無視した頑張りやパフォーマンスの競争になる。例えば、残業をしているだけの組織になる。長時間労働の労働時間だけで競おうとする体質の組織になる。
 機能で見ればよいものの、機能とは異なるモノサシを入れてしまった組織は、効率を見ないパフォーマンスで勝負する組織となる。無駄が維持されてしまい、形骸化、衰退していくことになる。