自動報道システム

 今後の自動報道システムというものを考えておこう。報道もネット化、自動処理化されていくであろう。

 ネットでもテレビでも、パターン化された報道というものがある。例を挙げてみよう。

 猛暑といえば、熊谷市大磯ロングビーチが出てくる。大雨が降るとレポーターが傘を持って歩けず、傘の骨が折れる。
 雪が降ると、東京郊外駅前のテレビカメラの前で、女性が滑る。
 ナスダック・ニューヨーク証券取引所といえば、いつも鐘がカーンカーンと鳴って外人が並んでいる。

 パターンが分かりやすいのは、季節モノ、経済モノ、文化に関わるモノが多い。去年の映像を使ったとしても気づかないであろうという類のものだ。

 こうした報道は、ニュース原稿の自動生成で代替されるであろう。

① まず、過去のニュース記事のテキストを蓄積しておく。
② 最高気温や株価などは、検索を自動化して、数値やテキスト、キーワードを抽出する。
  気象庁等のホームページや海外のニュース、公開情報を使ってもよい。
③ 記事を各文に分割し、統計的に多く使われている表現と似せて文章を自動生成する。
  その記事を、ホームページにアップする。あとはメールで自動配信するなり、何とでもなる。

 原稿が自動生成されれば、スマートフォンなどに記事を送って読むようにすればよい。従来のニュースや新聞を見る必要がなくなる。

 自動処理化に併せ、原稿の内容も、もう少し定量的な表現になっているとよい。

 例えば、経済ニュースで、急落・急騰という表現が使われることがあるが、大抵、とても客観的な表現とはいえない。
 円やドル、日経平均の変動であれば、何%変動したという表現で統一されているほうがよい。
 「高値」「安値」という用語は、過去1年で最も高いとき、安いときに使用する等とする。 
 「急騰」「急落」という用語は、過去1年の変動の1シグマを超えるときに用いる等とする。「年初来…」という表現は、意味がないので廃止する。こうして、もう少し用語を統計的に正確に使用する。
 各用語や数値の表現は、各国の通貨、債券、資源価格、株価等で統一して使用する。
 こうしたところは、コンピュータ処理が圧勝するであろう。

 貿易統計や為替のニュースにしてもおなじだ。
 「…が急騰した。理由は米国の雇用統計が改善したため」という報道が多い。しかし、その日のうちに反転することなどいくらでもある。表現が主観的すぎる上、理由づけが二転三転する。

 「機関投資家が金を売却したので価格が下落した」と言いたいのであれば、金のマーケットは、いくらくらいで買いたがっている人が何%くらいるか示し、最も売った機関投資家は誰で、売却額はいくらで、結果、いくら下がった、という事実を伝えないと報道にならない。5W1Hの事実が特定できないのであれば、素人とあまり変わらない。
 もし理由が言えないのであれば、事実としていくら変動したということだけを伝えればよい。従来の報道機関やエコノミストが下手に理由をつけようとするから、信頼を失っていくことになる。

 自動報道システムでは、各国の通貨、金価格、原油価格、資源価格、株価を常時自動モニタする。ある一定量の変化があったとき、急騰・急落とし、報道を行う。
 すると、ある国で通貨が大きく下がると、適切なタイミングで報道されることになる。たまたまその国にいく人は、的確な判断ができ、報道の価値が生まれる。
 風邪の流行、事故、交通渋滞についても同じだ。各地域で一定量の変動を検出すると報道するようにする。

 自動処理化してしまえば、おそらくパソコン数台で維持できる。ほとんど最小限のコストでスピーディに的確で網羅性があり、客観的な報道が実現する。顧客は、いったん取り込まれると従来の報道では満足できなくなるであろう。
 例えば、各国の経済について、国や資源の種類によっては、日本では報道されなかったりする。しかしその後、日本に波及してくる場合がある。過去の報道を振り返ったとき、実は自動報道システムで報道されていたという事実がわかれば評価されることになるであろう。

 また、従来の報道機関と比較すると、放送局を維持するコストの差分だけ有利になる。余計な人員をかけていそうなところから順に、自動処理化で狙い撃ちされていくことになる。彼らは職業の存在意義を問われることになる。旧態依然とした報道のやり方が並存している間、コスト差が維持することになる。ずば抜けた競争力を維持できることになる。