GDPについて把握しておこう

世界のGDPは約70兆ドル(2012年、名目GDP)とのことだ。世界の人口を70億人として1ドル100円とすると、70兆ドル/70億人≒100兆円/億人=100万円/人となる。概算ではあるが、世界で平均すると、1人あたり年収100万円に相当する。

アメリカのGDPは18兆ドル、日本のGDPは6兆ドル程度となっている。同様に1ドル=100円で日本円に換算すると、1,800兆円、600兆円となる。1ドル=120円換算なら、1,500兆円、500兆円となる。
アメリカの人口(3億1千万人)は日本(約1億3千万人)の約2倍強なのだが稼ぎは3倍ある。日本のほうが効率が悪いということになる。もう少し正確にいえば、人口は2.3倍多いが収入は3倍なので、2.3/3=77% となる。国際競争力を上げようと思うのであれば、日本のほうが2割程度、効率が悪いことをしていると思ったほうが健全だ。

簡単のため、日本のGDPは500兆円として、日本の人口を丸めて1億人とすると、500兆円/1億人=500万円/人となる。1人あたり年収500万円に相当する(注1)。

もう少し細かく把握しておこう。
日本の労働力人口は6,000万人程度とのことなので、日本の総人口1億3,000万人の約半分が働いている。人口1億で丸めると、約6割が働いているとみなしてよい。
また、GDPは、売上から原価(=そのまま海外などに出て行くお金)を引いた粗利に相当するが、粗利のすべてが給料になるわけではない。企業の取り分もある。粗利のうち、労働者に分配される比率を労働分配率といい、日本の場合は約6割とのことだ。
そこで、1人あたりの給料をもう少し正確に求めてみると、(500兆円×労働分配率0.6)/(人口1億×労働力人口比率0.6)=500兆円/億人となって上の計算と同じになり、500万円/人となる。平均年収500万円となる。
結局、GDP 500兆円と聞いたら、そのまま、年収500万円と読み替えればよい。

これは、課税前の所得だ。

所得税率と地方税率(住民税率)は、それぞれ、20%、10%程度となっている(年収500万円で)。また、社会保険料も実質10%程度となっている。社会保険料は企業と折半等となっているが、人を雇って赤字になるなら企業が社員を雇用するはずがない。実質、労働者が払っている。
税金も煩雑な仕組みになっていて、控除など国民の要望を反映させたようではあるけれども、それぞれの仕組みごとに行政や資格者(公認会計士、税理士など)が手数料を得るように作ってあるということだ。

サラリーマンの側からすると、結局、税率は合計で約40%となる。要するに、労働で得た収入のうち、約半分弱が税払いに充てられると思えばよい。

税金は500万円×40%=200万円、手取りは300万円となる。
ボーナス100万円程度とするなら、月の手取りは20万円前後となる。都心に住んでいるとして、家賃10万円弱、衣食10万円前後とすると、ギリギリの生活となる。
年齢が若いと手取りはこれより下がるし、年齢が上がると手取りは増えるが家賃・教育費等の出費も上がっていく。
サラリーマンであれば、生活費を切り詰めるか、地方に勤務して家賃を下げる、親と同居する、などの工夫が必要になってくる。

つぎに税収という観点で把握しておこう。

500兆円の粗利(GDP)があったとして、日本の総消費、すなわち、その年のうち消費に回る金額は300兆円程度といわれている。500万円のうち手取りが300万円程度なので、だいたい、つじつまが合うことになる。また、消費税率を1%上げると2.5兆円前後の増収になるといわれているので、300兆円×1%に相当すると考えると、やはり、つじつまが合う。

消費税は現在8%なので、総消費300兆円×8%=24兆円となる。年収500万円なら、24万円が消費税となる。消費税が10%となると30万円の支払いとなる。

サラリーマンの場合、直接税の実質負担が約40%、消費税が約10%なので、だいたい半分が税払いとなる。どうりで生活がつらいわけだ。

多くの人は、就職して数年はギリギリの生活となる。結婚して共働きで収入が倍となると、家賃や食費の負担を減らせた分、生活が楽になる。
また公務員は、意図的に基本給を下げ家賃補助などを増やしているので、税払いを逃れた分、丸々、生活が楽になる。
基本給ではなく補助を得るようにすれば、10万円の補助は20万円の基本給(税を引かれてほぼ半分になる)相当の価値があるということだ。

少し見方を変えると、多くのサラリーマンがギリギリの生活となる程度に税負担が設定してある、ともいえる。また、ギリギリの生活にしないと多くの人は働かない、効率の悪い企業にいったん就職してしまうとなかなか転職できない(仕事を辞めるとすぐに生活が破たんする。人材の流動性が失われ、国際競争力も改善されない)、という言い方もできる。
また、公務員などに家賃補助などをすればするほど、効率を下げる仕事(制度、書類仕事)を増やして増税側に回る、という言い方もできる。
勤労所得は税負担が40%だが、株式配当金利収入は税負担が20%程度なので、勤労所得のみに収入を依存してしまうと疲弊感が強くなるともいえる。

義務教育や高校教育くらいで、収入や支出が上の程度になるということくらいは教えてあったほうがよいと思う。その後どうなるか知らないまま職業選択することになってしまう。また、なぜ疲弊感が強いかわからないまま5年や10年、働き続けることになってしまう。







注1 つぎの関係を覚えておくと便利である。

万=10^4
億=10^8
兆=10^12
1万×1億=1兆 
1万×1万=1億