ヒートアイランドの改善方法

毎年、暑くなると打ち水でもして何とか涼しくできないかといつも思う。
太陽エネルギーと蒸発熱について考えてみよう。

地球が受ける単位面積当たりの太陽エネルギーのことを太陽定数といい、1.37 kW/m^2 = 1.96 cal/(cm^2・min) (大気圏外で)となっている。
このうち 50% 程度が地表に届くとすると、1.37 kW/m^2 x 1/2 = 685 W/m^2 程度となる。日本は緯度が高いので多少割り引いて 500 W/m^2 程度としてよいだろう。

ドライヤーの消費電力は 1,000 W くらいなので、1平方メートルあたりに1個ずつドライヤーを敷き詰め、温度を弱に設定したくらいの発熱量に相当する。どうりで日光が真上から当たる真夏は異常に暑いわけだ。

太陽光の場合、ドライヤーの温風とは異なり、輻射熱としてエネルギーが伝わることになる。電気ストーブと同じで光のように熱が伝わる。遮蔽して影ができると、遮蔽した物体側の温度が上がり、影になったところには熱が伝わらなくなる。

太陽光がコンクリートアスファルトに当たると、この太陽熱のエネルギーはコンクリート等の体積全体に吸収され、温度が上昇する。
マンションなどのコンクリートは体積(熱容量)が大きいので、いったん温度が上がってしまうと、なかなか温度が下がらない。コンクリートアスファルトで囲まれた都会では、コンクリートどうしが互いに輻射熱を出し合うことになる。舗装された道路を人が歩くと、周囲を電気ストーブで囲まれたような状態となってヒートアイランド現象となる。また、夕方になるほど建物や道路に蓄積される熱量が大きくなるので暑さがひどくなることになる。

なので、コンクリートなどの体積が大きなものについては、温度が上がる前に打ち水などをしておき、蒸発熱で温度上昇を遅らせると効果があるといえる。

体積が大きなベランダ、道路、マンションの壁などに直射日光が当たると、なかなか温度が下がらなくなってしまう。なので、直射日光が当たる部分は、熱容量が小さなモノで遮蔽するのがよいことになる。面積が大きく熱容量(体積)が小さいとなると、薄い板状のものとなる。たとえば、すだれやアサガオなどの植物(葉)で太陽光を遮るというのは理に適っているといえる。

つぎに、1平方メートルの面積を 1m x 1m x 0.3mm 程度の鉄板で遮蔽したとして、直射日光が当たったときの温度上昇を見積もってみよう。
鉄板の体積は 100cm x 100cm x 0.03cm = 300 cm^3 となる。鉄の比重は 7.87 g/cm^3 程度なので、重量は 7.87 g/cm^3 x 300 cm^3 = 2.3 kg となる。だいたい 2 kg の鉄板となる。
鉄の比熱は 460 J/kg・℃程度となっている。2.3 kg の鉄板の場合、460 J/kg・℃ × 2.3kg = 1,058 J/℃ となる。言い換えると、1J のエネルギーを与えると、1/1,058 ℃だけ温度が上昇する(熱の逃げは無視する)。

直射日光による熱量は 500 W/m^2 = 500 J/s・m^2 程度だった。そこで、この熱量を鉄板の温度上昇に換算してみると、500 J/s・m^2 x 1 m^2 x 1/1,058 ℃/J = 0.472 ℃/s となる。1分あたり、28℃ (= 0.472℃/s x 60s) も温度上昇することになる。
外気温が 30度なら、数分で58℃くらいの温度に上がりうる見積もりとなる。もっとも、鉄板の温度が高くなりすぎると輻射熱による熱の逃げが大きくなるので、温度の上昇は緩やかになる。しかし、やけどをするくらいの温度にはなりうるということだ。

さてここで、打ち水をしたとして気化熱で熱を逃がすことを考えよう。

上の鉄板に打ち水をしたとして1平方メートルに撒く水の量を仮にコップ1杯(180g)程度としよう。蒸発熱は文献等にあって、180g の水の蒸発熱は計算してみると 400 kJ 程度となる。コップ1杯の水を1時間で蒸発させるとすると、熱の逃げ量は、ワット数換算で 110 W 程度となる。

1平方メートルあたり、太陽光による熱エネルギーが 500W もある。一方、この面積に1時間ごとにコップ1杯の打ち水をして蒸発させたとしても、110 W 程度の熱エネルギーを奪うだけだ。放熱量が全然足りない。しかも蒸発熱で換算しているので、水滴を残さず蒸発させたベストの場合でも熱の放出量が足りないことになる。

直射日光が強い日は、1日に数回の打ち水程度では、まさに焼け石に水という見積もりとなる。

10分おきにコップ1杯の水を撒くくらいでないといけない。しかも、撒いた水はすべて乾燥させるくらいでないといけない。
すると、水を撒くのは人が行うよりもミストの噴霧器のようなもののほうが適していることになる。また、10分おきくらいに間欠的に水を撒き、水が地面に落ちるまでに乾燥するくらいがよいことになるため、高いところから噴霧するのがよいことになる。

直射日光が当たるところは板状のもので遮蔽し、太陽光が当たって高温になる部分の近辺を10分置きくらいに噴霧するとよいことになる。

すると、家庭用としては、ペットボトルくらいの水量が入り電池式になっていて、10分置きくらいに噴霧できるモノがあるとよいことになる。屋根やベランダなどで直射日光が当たりやすいところ、高温になるところにおいておき、噴霧させておけばよい。

太陽光の熱量と蒸発熱から見積もると、上記のような結論になる。しかしながら残念なことに、ネットで探してもこのような製品は見当たらない。
どなたか格安で製品化・販売してもらえないだろうか。似たようなものを探すとトイレの液体芳香剤で電池式のものがある。1,000円くらいだ。これを改造すればよい。

こうした噴霧器をベランダのエアコンの室外機の近辺など、高温で乾燥しやすいところに設置する。すると、冷却効率が上がるのでエアコンの消費電力も改善する。
各家庭の夏の電気代は1万円前後であろうから、電気代が数%〜何割か節約できるのであれば普及する可能性がある。ヒートアイランドなど生活環境の改善や節電につながるはずだ。