破壊的イノベーションのステップ

破壊的イノベーションのステップについてまとめておこう。
よく知られている内容であるが、変化が著しい分野でもあるので書いておこう。

ステップ1 オモチャのような技術が現れる。

 ある業界の下層に、突如としてオモチャのような技術が現れる。
 業界内の人からすると、受け入れがたいが気にはなるというタイプのものだ。
 業界の権威、プロに聞くと「あれはオモチャだ」という。
 確かにプロの製品やサービスと比較すると、明らかに見劣りする。
 品質的に劣るという証拠がある。否定して安心しようとするマインドが働く。

ステップ2 業界の外の素人にオモチャが普及していく。

 しかし、オモチャなので格安だったり無料だったりする。
 オモチャと思っていたものが、業界の外の素人のような人々には普及していく。
 
 プロよりアマチュアのほうが人数が多い。従来の業界の外でオモチャが普及する。
 普及するにつれ、オモチャもユーザの要求を受けて改善されていく。オモチャの品質が上がり始める。オモチャが進化するスピードと、業界が変化するスピードを比べると、オモチャの進化のほうが速い。
 プロを負かすような素人が出てくる。明らかにダメなプロはあぶりだされる。

ステップ3 業界の成長が止まる。あるいは下がり始める。

 オモチャとはいえ、プロのサービス・機能と共通する。
 業界は大所帯で変化が遅い。動きが鈍い。

 オモチャが広がるにつれ、次第に、業界の売上や成長が止まる。業界内では人を削減しないといけなくなる。より少ない人でより多くの仕事を回さないといけなくなる。
 小さくなっていくのは旧来の業界だけであって、素人も含めた新たなマーケットは広がっている。

ステップ4 旧来の業界が破たんしていく。

 業界をトップ層、ボトム層にわけたとする。
 すると、ボトム層で業界の破たんが起こり始める。経営統合、再編が起こる。
 ボトム層はもともとトップ層のモノマネで成り立っていたところがある。
 企画管理、立案をする部門がトップ層や流行のモノマネをして、それ以外は運営だけでやっていた。
 そのような、ぶら下がっていただけの人々の人件費が稼げなくなる。

ステップ5 オモチャが社会に受け入れられる。

 普及率が上がりオモチャが市場に浸透する。
 素人や社会はオモチャを支持する。旧来の業界は大半が見捨てられる。
 旧来の業界で価値を生み出してきたトップ層は自分自身を変革して生き残る。自然淘汰が起こる。

 ざっと上記のようなところであろう。

 オモチャは、「2.5インチハードディスク」であってもよいし、「デジタルカメラ」、「大学の講義の動画」、「インターネットニュース」、「将棋ソフト」、「電気自動車」であってもよい。

 破壊されていくというと否定的な捉え方をする人々が多い。

 人々を農耕民族と狩猟民族にわけたとき、毎年同じ農作業をすることがよいことだという発想をする人がかなりいる。農耕民族的な発想からすると、去年と同じことを繰り返すのがよいことだ。同じことを繰り返していたほうが楽だ。従来の慣習を壊すのは悪いことだ、となる。
 しかし、狩猟民族的にみれば、獲物がいなくなったのであれば従来のこだわりは捨て、場所を変えて作戦を立て直すという発想も重要だ。狩猟の場合は、まったく同じパターンを繰り返すことのほうが少ないであろう。

 どちらにせよ未来には破壊されることがわかっているのであれば、早く崩壊させたほうがよいという発想もあるということだ。
 結局、社会にとって価値を生み出していない人々は淘汰されていく。無料ウェブサービスのようなものに代替されていく。

 大学などもトップの大学は生き残るであろう。しかし、人気のない大学は、ウェブの無料の動画の講義と比較され、経営破たんや統合が起こるであろう。役所や規制産業も同じことだ。

 身の周りで上記のパターンに当てはまるものを探してみて、当てはまりそうなものは破壊的イノベーションのパターンではないかと考えて備えておく(先に撤退したり、発想を切り替えておく)ほうがよい。