日本の電力消費

日本の電力消費について考えてみよう。一例として、地熱発電についてもまとめておこう。

 日本の発電電力量は、11,400万kW = 114,000 MW 程度となっている。2011年以前は、この3割程度を原子力発電に依存していた。総電力設備容量は 272,701 MW となっている。設備の稼働率は50%程度ということになる。

 一方、地熱発電は実績で 535 MW となっている。日本の発電電力量の0.5% 程度しか占めていない。潜在的な地熱資源量は、23,470 MW = 2,347 万kW (150℃以上) 程度となっている。
 現在、地熱エネルギーのほとんどすべてを捨てていることになる。地熱発電を推進すれば、現在の40倍まで発電電力量をあげられる可能性がある。0.5%を40倍すると20%、2割となる。従来の原子力発電の電力量に近いところまでいく。

 電力の消費地都道府県別で見てみると、上位は、東京、大阪などとなっている。東京は、全国の電力量の1割を消費している。地熱発電に適した地域は、北海道、東北、九州となっている。地熱発電は潜在的に、全電力量の2割程度に相当している。

 そこでもし、北海道や東北の地熱発電で得た電力を東京、大阪などの大都市が買い上げることにしたとする。電力の発電量、消費量としてはほぼ同額となる。
 すると、買い上げた分、現在日本が海外から購入している石油や天然ガスは購入する必要がなくなる。その分、日本の経常収支は改善する。概算してみると、各月の経常赤字のかなりの割合が解消する額となる。

 言い換えると、現在、地熱エネルギーは単純に捨てられていて、なおかつ、単に燃やしてしまうだけの天然資源を海外から輸入している。二重に損をさせられていることになる。そこで、この燃やしてしまうだけの天然資源を、現在捨てているだけの地熱エネルギーで賄う。
 すると、この分の資金で、レアアースなどの「なくならない資源」、「付加価値をつけて海外に売れる資源」を購入できる。海外の成長企業を買収して取り込むこともできる。現金をそのまま蓄えておいてもよい。これはそのまま、国際競争力の強化につながる。

 現在、丸々捨てている地熱エネルギーを大都市が買い上げるだけで、日本の国際競争力を強化できることになる。都道府県程度の一地方自治体が判断するだけで、将来の展開が大きく変わる。

 ただし、この場合、北海道、東北、九州の地熱発電で得た電力を、東京、大阪に送る必要がでてくる。単にすべての電力を大都市に送ったのでは、従来の公共工事と同じで無駄であろう。
 大都市一極集中を分散化するとよいことになる。例えば、電子政府化を進めて、データ処理サーバやホームページなどのシステムは北海道や九州に順次移設することに決める。大学や研究機関も情報のデジタル化、動画化を進める。東京大学の全講義をデジタル化して、そのデータを北海道や九州に置く。計算サーバも北海道に置く。国会図書館もデジタル化してデータ処理サーバを北海道に置く。技術文献もすべてデジタル化して検索システムを九州に置くことにする。

 既存の発電システムや電気代には福島原発の処分費用が加わるであろう。また数十年後には、廃炉になるであろう他の原発の処分費用も上乗せされていくであろう。

 北海道、東北、九州の側からすると、地熱発電の設備を増設して、その電力を少し割安にしておく。そして、データ処理サービス等を行う企業、団体を誘致していけばよい。もともと捨てていたエネルギーで競争できるのだから、火力発電の電気代が上がるにつれ、自然に淘汰が進んで有利となる。

 また、地熱発電の設備を分散・独立させておくことが重要だ。何しろ、市場規模が40倍に化ける成長分野と見込まれるからだ。あらゆる産業・行政システムの情報化は今後も必ず進む。地熱発電をその情報インフラのエネルギー源とする。
 最悪な選択肢は、国に陳情して大規模な公共工事をすることだ。そして、地方のエネルギーの主導権を国に奪われることだ。
 重要なのは、中小規模の発電設備でよいから、エネルギー源の主導権を取ることだ。地熱発電は一例であって、潮流発電など他の自然エネルギーでもよい。独立・分散したエネルギー源を持つことが戦略上重要だ。
 エネルギー源さえ確保できれば、企業を誘致したり、税負担を軽減して若い世代を呼び込むなど、新たな選択肢が出てくる。

 電子政府サービス、データ処理サービス、納税相談サービス、教育サービス、電子医療サービス、法務サービス、報道サービス、データ通信サービスを分散型のエネルギー源で賄うようにする。無償のサービスシステムを作る。
 東京、大阪、その他、人々が生活する都市では、格安のサービスが受けられるようにする。基本インフラを無償化していく。
 各家庭では、教育費、通信費、行政・税金などの負担が削減できることになる。単純に無駄がなくなった分、ランニングコストが下がり、競争力を強化できる。




参考1 電気事業連合会ホームページ
参考2 http://www.geothermal.co.jp/etc/geo04.htm
参考3 計算のメモ書き 

1年 = 24h x 365日 = 8,760時間 
1月 = 8,760時間/12 = 730時間

発電量 
約10,000億kWh/年 = 1.14 億kW
= 1.14 x 100,000,000 kW = 114,000 MW = 11,400万kW 程度(2010年)

使用電力量
全国 285,283 x 100万kWh
東京 30,456 x 100万kWh
東京都の人口は全国のほぼ1割なので、電力消費も人口に比例すると理解しておけばよい。

世帯について 
世帯あたりの電力使用量は、300kWh/月・世帯となっている。電力料金の単価を 25円/kWh とすると、世帯ごとに7,500円/月程度を支払っていることになる。
1年に直すと 300kWh/月・世帯×12か月/年・世帯 = 3,600kWh/年・世帯
時間に直すと 300kWh/730h・世帯 = 0.41kW/世帯となる。
300kWh/月・世帯×6,000万世帯×12か月/年 = 21600000 kWh/年 = 2465.7 kW

太陽光発電について
地球が受け取る単位面積あたりの太陽エネルギー(太陽定数)は、1.37kW/m^2 = 1.96cal/cm^2・min(大気圏外)となっている。
50%程度が地表に達するとすると 685W/m^2 程度の太陽光を受け取ることになる。
住宅用発電パネルの最大出力は、1枚1600mm×800mm = 1.3m^2 程度の寸法で240W程度となっている。
効率は、240W/(685W/m^2 x 1.3m^2) = 27% 程度となる。
このパネルを20枚敷き詰めたとすると4,800Wとなる。損失2割として、4,000W = 4kW 程度となる。
一戸建て世帯であれば使える可能性があろうという程度の、設置面積、出力となる。
マンションであったり、勤務先がビル等の場合、人数が集まっている分、電力量が不足する。
雨の日や夜なども電力が不足する。
リアルタイムの必要性の低い分散処理を太陽光発電で賄うとよい。

地熱発電について 
実績 535MW = 535 x 1,000 kW = 535,000 kW
25円/kWh で金額に換算すると
535,000 kW x 25円/kWh = 13,375,000 円/h = 9,763,750,000 円/月 = 100億円/月 となる。
地熱発電を進めて40倍になったとすると 4,000億円/月となる。
2013年11月の経常赤字は1985年以降最大の 5,900億円程度とのことなので、経常赤字にほぼ匹敵する分が解消することになる。季節変動を入れるとプラスの月も出てくる。