報道の比較

 最近の福島原発の報道を比較してみよう。

 日本の大手新聞社の文章を抜粋してみる。
 「…全力で対処すべきだ。…総点検を急ぐべきだ。…タンクに水位計が必要だ。…原子力委員会のチェックが不可欠である。…政府一丸で…」などとなっている。
 全体がべき論になっている。力強い作文を書けばよいのであろうか。
 核物質の半減期が長すぎる。水が流れ込み続けるといつか必ず漏れ出てしまう。この問題を解決する案として、水位計が思いついたらしい。
 また、原子力委員会に税金を投入して、彼らがチェックすれば解決するようだ。

 他の日本の報道を見ると、地下水の流れなどはうまくまとめてあって、噛み砕いて説明してある。しかし、取材というよりは、解説委員1人の意見になっている。
 代表的な2つの報道機関がこうなっていて、他も似たようなものが多い。

 BBCを確認してみると、少し異なっている。
 タンクの個数や数値といった日本からの情報に加え、Google アースの航空写真が出ている。ここ2年間で増えた貯蔵タンク、地下水の流れなどが視覚的にわかるようになっている。
 マンチェスター大学などの英国の大学、米国、IAEA、技術者の発言を抜粋している。情報元が複数、かつ、国をまたいでいる。
 事実を時間軸や空間、数値で示し、取材先が喋った言葉を用いて、事実で語らせている。取材者の意見や主張の部分がない/少ない。
 全般的に分析的といえる。また、主観を排除して客観的であろうとする姿勢が見られる。

 報道のチェックポイントを列挙するとつぎのようになる。

・ 複数の情報ソースを取っているか。裏を取っているか。
・ 世界から情報が取れるか。海外の研究機関等から情報を取れるか。
・ 伝聞だけでやっていないか。
  政府や東京電力の情報を伝達するだけになっていないか。
・ 偏っていないか。網羅しているといえるか。
  原子力について取材しようと東京大学にいくと、やはり利害関係者となってしまう。この場合、海外に当たれるか。
・ 直接現場の情報が取れるか。海外の現場、技術者から情報が直接取れるか。
・ 理解力はあるか。技術を理解する能力があるか。
  技術的な問題に対し、技術的に提言する能力があるか。
・ 現場の事実を事実のまま伝えているか。情報を加工、総括していないか。
・ 事実から当然考えられる見通し、予測を伝えているか。
・ 作文だけになっていないか。べき論になっていないか。

    終わり