情報公開の方向性

 情報公開のステップについてまとめておこう。
 将来は、こういった方向性になるであろう。

① 情報を収集する。
  ネット情報、書籍、過去の体験や実例などでもよい。間違いは削除して、まとめていく。

② 情報を公開していく。
  できる限り多くの人々の、検索されやすいところに公開する。
  維持コストを下げるようにする。
  非公開の情報も1年経ったら公開していく等とする。

③ 公開した内容について改善を繰り返す。
  マーケティング的な反応を得る。
  反応が大きいところは、改善・充実させる。
  完成度を高める。
  ネット情報の中で、比較的価値がある状態を維持するようにする。

④ 内容や価値がないところは淘汰させる。

 どういうことか、少し考えておこう。
 Google に象徴されるけれども、ここ10年くらいで、情報というものに対するとらえ方や構造が変化した。

 従来、ノウハウや情報は、できる限り非公開にして、情報を蓄積すればするほど、差別化できるという発想があった。

 企業や個人でもそうだ。いまだに、こうした旧来の発想をしている人はたくさんいる。
 ウェブに出ている情報の質が低く、情報の取得にはコストがかかっていた。
 情報は人に付随していたので、周囲が博学と認める人を権威ということにして、手間をかけて情報を取得し、人手やコストをかけて組織を維持していた。知識は覚えていることが重要だった。検索技術が未熟だったからだ。

 ある一定量の知識が求められる専門分野があったとする。周囲からランダムに質問や問題が持ち込まれ、対応する必要があったとする。
 検索技術が未熟な時代では、その知識体系を丸ごと覚えていることが決定的に重要だった。覚えていれば、パターンがわかっている問題については、即、解決できる。知識を詰め込んでしまえば、それだけで専門家として通用した。

 Google に象徴されるように検索技術が進み、ネット上での情報の蓄積が進んだ。ネット上で情報を維持したり検索するコストは、ほぼゼロになった。そして、一部の良質な情報だけが評価されるようになった。

 良質な情報が続々とウェブ上に蓄積されるようになった。網羅性が上がって、大概のことはウェブで検索できるようになった。

 みな、Google検索を使うようになった。

 旧来の組織で、すべての情報を囲い込もうとするところは、情報がすぐに陳腐化してしまう。情報を囲い込むと、その情報を管理する人や組織を置かないといけなくなる。情報が増加すると、メンテナンスのコストが急上昇することになる。
 情報公開をしない組織は、メンテナンスの行き届かない古い情報に埋もれ、時間を奪われることになった。
 何かを調べる場合も、情報量が少なく、メンテナンスされていない、ガラパゴス化した情報はいまさら誰も見ない。みな、Google 検索している。

 大学教授や会計士、弁護士、医者でも、下手なことをいうと、すぐにネット検索されて、「それは情報が古い。YouTube のほうが説明がうまい。授業料を返して欲しい」等と指摘されるようになった。
 権威が、ネットの情報やコストパフォーマンスに負けるようになってきたのだ。

 情報の蓄積について価値基準が変わったということだ。

 情報の蓄積のみを行って、外部に情報を出さない組織は、情報が蓄積され、システムを複雑化させてしまうにつれ、メンテナンスのコストが上がっていく。いずれは崩壊してしまう。
 また、偏った情報、間違っている情報、わかりにくく勘違いを起こしやすい情報はいくらでもある。正しい情報が増えていくとしても、一部に間違った情報が埋もれていると、例えば、投資や参入、撤退等をしようとしたとき、判断を間違えるリスクが増えることになる。情報が増えすぎると、問題がどこにあるのか、何が適切か、判断しにくくなるのだ。

 言い方を変えると、もし、情報を抱え込んでクローズにすることが決定的に重要な分野であれば、そうした組織や企業は、高付加価値、高収益企業になっているはずだ。
 ブラックボックス戦略などといわれると素朴に信じてしまう人が多いが、何をブラックボックスにするのかが重要であろう。ネットや専門書で無料で公開されているものをブラックボックス化すると、抱え込んだ組織ごとマイナスになる。もともと0円の情報を隠すために、人件費を投入する格好になるからだ。
 人材や情報の蓄積量という点では圧倒的に有利だったはずの大企業や大組織で、いまでは崩壊状態になっていたり、過剰な人員を抱えていたり、予算削減が求められたり、再編を繰り返しているところはいくらでもある。
 情報の抱え込みや蓄積、秘匿化は、実は、勝敗を決める決定要因でないということだ。

 個人でも企業でも、基礎的な情報はできるかぎり異分野で多数の人に公開し、改善や自然淘汰をうながしたほうが競争力がつくという発想が出てくる。

               終わり